今年の国慶節の8連休で国内旅行にでかける中国人は約6億人に上ると報道されています。
最新の2019年末の調査で中国の人口は14億5万人と発表されていますので、人口の約41%が旅行で移動することになります。とんでもない数字ですね!
さらに驚くことには、あの「武漢」が中国国内の人気観光地1位に選ばれたというのです!
新型コロナの最初の感染者が出た都市。
ここから世界中に新型コロナウイルスが世界中に広まった…と、今や世界的に良いイメージのない都市なのに、なぜ中国では人気観光地として脚光を浴びているのでしょうか?
気になるその理由と、人気となっている観光スポットについて調べてみました。
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武漢の基本データ
武漢市( 、英語:Wuhan City)
総人口:1089.29万人(2018年末調査) ※東京23区(927万人)より100万人以上多い
↑うち市区人口は858.82万人、市区人口密度は1万5170人/km²で東京23区(1万5,428人人/km²)と同等
総面積:8569.15km² ※広島県(8,479km²)、兵庫県(8,401km²)と同程度
人口密度:1271.17人/km² ※千葉県(1,206人/km²)、愛知県(1,447人/km²)
位置:中華人民共和国の中部、湖北省の東部
近隣都市:重慶市(省と同じレベルの一級行政区であり、直轄市である巨大都市)
総人口が東京23区より多く、街中心部の人口密度も東京23区と同程度!
人口だけで考えても巨大行政区であることがわかりますね。
地理的に見ると長江とその最大の支流漢江の合流点に位置しており、古代から水運・陸運の拠点として栄えてきました。
現代でも中国内陸部最大の交通中枢都市の1つであり、国内外の企業が集まる工業都市として大変存在感があります。
また、工業だけでなく長江流域の平野を利用した農業、河川・湖沼での漁業といった第一次産業も盛んである他、現地大手百貨店が軒を連ね、カルフール・IKEA・イオン・ニトリ・ローソンなどの外資系大手小売業者も多数参入していることから第3次産業も栄えています。
また意外でしたが、武漢へは成田・羽田・中部・関空などから直行便も出ています!
国内外の企業が集まる武漢ですから、日本から駐在や出張で行かれる方も多いのではないかと思います。
武漢はなぜ今人気観光地となっているのか?
新型コロナウイルスの発生地であり、最初に爆発的に感染が広がった都市、武漢。
街全体がロックダウンされたことによる悲劇的なニュースも連日沢山取りざたされていました。
日本人だけでなく、中国人にとっても脅威であったことでしょう。
そんな新型コロナの震源地とも呼ばれた武漢が、なぜ今最も訪れたい人気の観光地になっているのでしょうか?
以下のような理由が考えられます。
新型コロナ封じ込めに成功した「安全な街」というイメージ
2020年1月23日、新型コロナ感染者が爆発的に増えたことを受け突如封鎖された武漢。
空港・鉄道等の交通機関が全て停止され、人っ子一人通さない厳格な移動制限が敷かれました。
武漢内では5万人を超える感染者、3869人の死亡が報告されましたが、この厳格な移動制限と感染者の隔離により新規感染者は減り続け、4月8日に正式にロックダウンが解除されました。
その後5月12日に再び6人の感染者が確認された際には、武漢市はすぐに市民1100万人全員を検査するという野心的な方針を発表し、6歳以上の全武漢市民を対象に検査を実施。
最終的に990万人を検査して約300人の無症状感染者があぶり出し、隔離を行いました。
・感染拡大期に厳しい移動制限・隔離政策を行ったこと
・140億円もの費用をかけて市民の「全員検査」を行ったこと
これらの政策により武漢市民の不安が取り除かれ、市外からも「安心安全の武漢」というイメージを持たれるようになりました。
これにより「武漢に行っても大丈夫」と考える人が増えたことが、人気旅行先となった理由の1つと考えられます。
湖北省の観光誘致キャンペーン
また現在、国慶節に合わせて中国各地で観光地の無料開放や旅行費用の補助が行われていますが、武漢が位置する湖北省政府も独自の観光誘致を打ち出しています。
内容としては、「今年の年末までの期間全国の観光客に対し、湖北省内約400か所のAクラス観光地の入場料を無料化する」というものです。(※中国政府は国内の重要な観光地に対して等級を付与していて、低い方からA〜5Aまでの等級が存在します)
また武漢市内でも「打卡大武汉(大武漢にチェックインしよう)」というキャンペーンが行われ、市内の23か所のAクラス観光地が無料で開放されているそうです。
これらの観光誘致キャンペーンも武漢への旅行の動機につながっていると推測されます。
武漢の人気観光地、黄鶴楼(Yellow Crane Tower)
Trip.comで2位の上海ディズニーランドを押さえ、中国国内での人気観光地1位に輝いたのがこの黄鶴楼。三国時代の223年、呉の孫権によって軍事目的の物見櫓として建築されました。
長い歴史の中で何度も焼失・再建が繰り返され、現在の建物は1985年に再建されたものです。
李白や毛沢東など多くの歴史上の人物の漢詩に登場する中国随一の観光名所であり、世界遺産にも登録されています。
新型コロナウイルス肺炎の発生を受けて1月23日に閉鎖されましたが、その後4月29日に98日ぶりに屋外部分のみ開放されました。
その際、中国現地のメディアが「黄鹤归来,武汉复苏(黄鶴が帰ってきたら武漢が復興を迎える)」と形容したほど、黄鶴楼は新型コロナウイルスに克服することができた「武漢の復興のシンボル」となっているようです。
おわりに
今年の国慶節休暇は新型コロナウイルスの影響で、例年のように海外旅行に行くことができません。その分、中国国内で遠くへ旅行して楽しもう!というムードが盛り上がっているようです。
武漢という都市は交通の要所であり主要都市の1つではありますが、これまでは観光客が押し寄せるようなメジャーな観光地ではなかったようです。
せっかく観光地が無料開放されたり敷居が低くなっているのだから、この機会に「あの武漢」に行ってみよう!と考える人が多いのも無理はないのかもしれませんね。